ランダムエコノミーに勝機を。StoKee起業家の軌跡 Vol.1

本シリーズでは、StoKeeにあるビジネスアイデアから実際に事業の立ち上げを模索する起業家の軌跡を紹介する。記念すべき第一回は「オンラインガチャプラットフォーム」のビジネスアイデアに取り組む一人の会社員。起業に対する考え方や、StoKee(ストーキー)にアイデアを投稿してから実際にやってきたこと、そして、現在進行中のサービスについてお話を伺いました。

今回ご紹介する起業家

伊藤さん(仮称)
StoKee事務局 藤川
某コンサル会社で働く社会人。本業の傍ら、オンラインガチャサービスの立ち上げ準備中。趣味はチェーンソーマンを見ること、たまにサーフィン。日常でやっているランダムなことは、「サイコロを振ってご飯を決めること」。
インタビュワー

StoKee事務局 藤川
StoKee事務局 藤川
普段から「何か面白いアイデアはないかな?」と探究心を持って生活するビジネスアイデアオタク。得意領域はメディア、HR/好きな領域は、飲食、美容など。

※今回の事業内容にご興味のある投資家の方、一緒に仕事したいと考えるエンジニアやデザイナーの方は、起業家の方に直接ご連絡ください。(tanio3369@gmail.com)「StoKeeの記事を読んだ」と伝えるとスムーズに話が進みます。

“自分”が設定したテーマを仕事に。その手段としての「起業」

“自分”が設定したテーマを仕事に。その手段としての「起業」

まずは、某コンサル会社で、顧客に対して業務改革支援や伴走型のPoC実行支援に携わる伊藤さんに、起業に対する思いや考え方について伺いました。

ー 現在お仕事もされているかと思いますが、「起業」を意識したのはいつからですか?また、きっかけ等もあれば教えてください。

伊藤:起業をぼんやり考え始めたのは1年前からです。きっかけは…そうですね。このまま誰かが設定したテーマ(仕事)を続けるだけではなく、自分が興味のあるテーマや世に問うてみたいアイデアを形にしたいと思い始めたからです。

ー なるほど。カッコ良いですね。

伊藤:コンサルの仕事は「トレーニング」に近い感覚で、何かをするために強くなっているという感覚はあるが、最終的にその「何か」を自分自身で設定することはできません。問題解決能力を身につけたい人や、ある領域の知識を深めていきたい人には向いている業界だとは思いますが、実際に自分でやりたいことがある時に、必ずしもその仕事がすぐに出来るわけではないので、「自分で何かをやってみたい」という願望を満たすことはできないだろうなと思っています。

ー それで、「起業」という選択肢が出てきたということですね。

伊藤:そうですね。なんとなく、普段の生活の中でも「こうなったら面白いだろうな」というアイデアを考えることはあるので、それを実現していけたらいいなと。とはいえ、マーケットのニーズとの兼ね合いもあるため、必ずしも全て自分がやりたいことができるわけではないと思いますが、誰かに設定されるよりは自分で決めたことをやりたい派なので、起業を考えるようになりました。

一番最初にやったこと=ユーザーヒアリングでアイデアの仮説検証

一番最初にやったこと=ユーザーヒアリングでアイデアの仮説検証

本業に携わりながらも面白いサービスやビジネスアイデアに関心の高い伊藤さん。続いて、StoKeeでアイデアを投稿してからの行動についてお話を伺いました。起業を志す者にとって最も気になる「まず何をすべきか」という部分を深堀りしていきます。

ー 今回、StoKeeに投稿していただいた「オンラインガチャプラットフォーム」のビジネスアイデアについてお話を伺いたいのですが、そもそも、StoKeeを知ったきっかけはなんですか?

伊藤:twitterで知りました。自分のビジネスアイデアに対して他者からコメントがもらえる“叩き台”のような場所があるんだ、ということで投稿してみました。

ー そうなんですね!では、アイデアを投稿してからはどんなことをされたのでしょうか?

伊藤:やってきたこととしては、ニーズを検証するためのユーザーヒアリングです。オンラインガチャのプラットフォームですので、「ガチャに商品を登録する事業者(人)」と「ガチャを利用する人」の二人のアクターが登場するので、ガチャに登録したいかどうか、ガチャを回したいかどうかのニーズがあるのかを確認していきました。

ー すぐにユーザーヒアリングに着手されたのですね。なぜ、アイデア投稿後にヒアリングをしようという思考に至ったのでしょうか?

伊藤:以前、起業について調べていた時に「起業の科学」という本と出会いました。その本に、MVPを作るまでの過程として、ユーザーの仮説検証、そして後のプロダクトの仮説検証が必要ということが書いてあったので、手順に沿って実行していったという流れです。

伊藤さんが実際に立てた課題とソリューション仮説
※伊藤さんが実際に立てた課題とソリューション仮説

ー そうでしたか。では、ヒアリング対象はどうやって探しましたか?

伊藤:自分の立てた仮説(ここではペルソナ)をもとに対象者になりうる人を探していきました。ガチャを利用する人は私の身近にいたので、その方々に聞きました。しかし、商品を登録する事業者側の知り合いはいなかったため、ヒアリングサービスを提供しているユニーリサーチを使ってヒアリングを行いました。

ー 実際にユーザーヒアリングをやってみた感想を教えてください。

伊藤:その分野に精通している人に直接話を聞くことができたので、自分の事業に対する新たな気づきをもらえました。また、一歩踏み込んだ話もすることができたので、単なる仮説検証にとどまらず、事業者の方とも課題感を共有することができたかなと思います。

キーワードは“ランダムエコノミー”ー 最適解の外側に勝機はある

キーワードは“ランダムエコノミー”ー 最適解の外側に勝機はある

ヒアリングを経て、解像度が上がったビジネスアイデア。最後に、伊藤さんに現在のビジネスアイデアについてのお話を伺いました。

ー ヒアリングのやり方など、起業を志す方にとって大変貴重なお話でした。では次に、伊藤さんが取り組んでいるビジネスアイデアについて教えてください。

伊藤:はい。一言でいえば、オンラインガチャのプラットフォームです。ガチャの中身をこちらで選定するのではなく、あくまでもプラットフォームとして各企業に使ってもらうことを想定しています。事業者側には、「ガチャ」という方法で自分たちの商品を販売できる、つまり販売チャネルが一つ増えるというメリットがあります。消費者側には、何が出てくるのかわからないという「ワクワク感」を体験しながら商品を購入することができるというのがメリットとなっています。また、単にガチャとして個人が楽しむだけではなく、友達や知り合いに贈る“プレゼント選び”のための活用も合わせて検討しています。「相手の好きなジャンルは知っているが、具体的に何を贈れば良いか分からない」といった時に使ってもらえるのでは、と。

ランダムギフトプラットフォーム利用の流れ
※ランダムギフトプラットフォーム利用の流れ

ー なるほど。プラットフォームとして企業に提供しつつ、消費者は“ランダム”に商品を買ったり、プレゼントを贈ることができるのですね。

伊藤:今のところは、そんなイメージです。私が作ったランダムエコノミーという造語があるのですが…

ー ランダムエコノミー?

伊藤:世の中があらゆるデータを基に最適化されていく中で、最適化から少し離れたものを楽しむ形式の経済活動を「ランダムエコノミー」と私の方で勝手に名付けてみました。多くの人が最適化に慣れていく中で、外れ値みたいなものを楽しむ文化や経済圏が生まれる可能性がある、という私の仮説をもとに今回のオンラインガチャサービスを考えました。

ー なるほど。

伊藤:ランダムエコノミーといっても、おそらく不可逆性の高いものは向いてないと思っています。例えば結婚相手とか、一軒家など、人生の中で選択回数が限られているものや大金のかかるものはランダムに向いていなくて、反対に、アクティビティや宿泊先、通年贈るギフトなど、人生に影響が小さく且つ短期的に済む可逆性の高いものであれば、ランダム要素がもたらすアップサイドを楽しむことが出来ると思っています。「自分では選ばなかった新しいもの」と出会えることを付加価値として感じてもらえるのでは、と。

ー 確かに、ECサイトでレコメンドされる商品は、似たり寄ったりのものや一度見たことがあるものも多く、驚きや発見といった体験にはつながりにくいですね。

伊藤:「あったら面白いかも」というイメージから生まれたビジネスアイデアですが、世に出す価値があるかというのを検証するためにも、今はプロダクトを作成して実際にマーケットで確認していきたいと思っています。

ー ということは、これから伊藤さんがやろうとしていることはMVP開発?

伊藤:はい。ヒアリングを通じて、何が出るかわからないワクワク感からガチャを回すニーズと、プレゼントを贈るときにガチャを回すニーズはありそうということがわかったので、MVPを作って、実際のリアクションを見ていこうと考えています。今は、実際のオンラインガチャの画面を設計しています。実装に関しては、自分一人でするのが難しそうであれば、エンジニアの方にお願いしようと考えています。


ー MVPはいつ頃完成する予定でしょうか?

伊藤:そこまで難しい画面設計ではないと思っているので、(エンジニアさん1人の場合)テストも含めて二ヶ月くらいかと思います。

ー 二ヶ月後!年明けにはお披露目ですね!今時点で困っていることなどはありますか?

伊藤:圧倒的、マンパワーです。画面設計に関しては、こだわった方が良いところでもあるため、自分でUIUXの本を読みつつ、デザインを詰めている最中です。しかし、私自身はデザイナーでもエンジニアでもないため、一緒にやってくれる仲間がいると心強いですね。

ー 人材の悩みはあるあるですね…ちなみに、今は会社員として企業に勤めながら事業を進めているかと思いますが、将来はどのように考えていますか?

伊藤:今はオンラインガチャプラットフォームの事業を作りつつ、PMFを達成できるのであれば、そのタイミングで独立しようと考えています。

ー なるほど。オンラインガチャプラットフォーム事業が、早く世に出ることを楽しみにしています!本日はどうもありがとうございました。

次は、MVP完成は年明けを予定しているとのことでしたので、完成したタイミングで再び伊藤さんにインタビューを行っていきます。乞うご期待!